ここのケーキは、まるで奧田シェフそのもの。どれもボリュームがあって、余計な飾りはなし。いかにも「パパッと作っちゃいました」という無骨な印象。だが、口にするとかなり面食らう。味覚へのインパクトが強く、ハッとするほど細やかで深い。がっしりとした体育会系、おっとりした笑顔とはウラハラに、この人、ものすごく神経質な職人さんなのでは?
「ウチはケーキのビスキュイがすべて違います。余計な飾りがないのは、おいしさに対して意味のないことはやらない方がいいから」と、笑顔できっぱり。理路整然とした話しぶり、閃くアイデアの非凡は、シェフのケーキにも端的に表れている。たとえば、ヨーグルトとチョコレートというユニークな組み合せで挑んだ「ニュイ・ブロンシュ」。ヨーグルトに生クリーム、メレンゲを独自の方法で加えて、絶妙の口当たりと酸味を出し、薫り高いチョコムースとのバランスをピタリと決めている。最後に、ビスキュイに混ぜたヘーゼルナッツの味がフワリと追いかけてくる仕掛けだ。ケーキを知る人ほど、その完成度の高さに驚かされるのだ。
ファミリー客の多い住宅街だから、子供にも安心して食べられるようにと、リキュール類を一切使わない配慮も。奧田シェフの手から生まれるケーキは、まさに精緻と愛情の塊なのだ。
※ビスキュイ=卵黄と卵白を別々に泡立てて作るスポンジ生地。共立てのジェノワーズ生地に比べて、目が粗め。 |
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