「ケーキ作りでシェフが一番大切にしていることは?」そんな質問を向けたとき、安食さんは何の迷いもなく「素材の持ち味を十分に生かしてあげること」と答えた。卵、牛乳からチョコレート、フルーツに至るまで、すべて産地や季節によって味が異なる。「だから、その日の素材の状態に合わせてレシピも変えるし、いい素材に出合うと、創作意欲を大いに刺激されるんです」。その矜持はまるで和食の料理人のよう。春はイチゴ、秋なら栗といった表層的なものではなく、ケーキが表現する"旬"とは何かを改めて考えさせられた。
素材に対する探求心が強いだけに、彼のケーキには独特の哲学があり、ときに度肝を抜くようなアイデアが盛り込まれることも。栗を使って6つの味と食感を表現した「マロン・ロワイヤル」などがいい例だ。そして何より、上質でモダンなフォルムが美しい。
建築家の家に生まれ、小さい頃から美術や建築物の鑑賞を習慣にしてきた。アートやファッションに関心が高く、会話のテンポもスマートで小気味よい。次代のスターパティシエとして、大きく花開く予感をさせる輝きがある。
フランスのカフェのような佇まいの店には、センスのよさにひかれた大人たちのさんざめきが絶えない。「今後はパンの種類を増やし、フランスの惣菜もおきたい。やりたいことは山ほどあります」。とどまることなく変化し続ける安食シェフから、ますます目が離せない |
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