| 赤いひさしとレンガ造りの可愛らしい店構え。入り口にはチョコレートで彩られたショーケース。棚にはガラス瓶に入ったクッキーや手作りのジャム、果物のコンポート、コンフィズリー、紅茶。窓側の棚には素朴な焼き菓子やヴィエノワズリーがずらりと並んでいる。この小さな空間には、魅惑のお菓子ワールドがギュッと凝縮されているようだ。「フランスのエピスリー(食材屋)の雰囲気が好きで…」と、照れ臭そうに笑う井上シェフ。チョコレート専門店やチョコレート菓子が多いことで有名な、バスク地方での修業経験がよほど 印象深かったのであろう、ボンボンショコラが約20種類と豊富で、10g/150円で量り売りしているのが楽しい。ガトーバスク、マカロンなど伝統的な焼き菓子は、どれも褐色で決して華やかさはない。が、それぞれが持つ味わいの大らかさ、豊かさは圧倒的だ。一つでも食べれば、彼が自分の目で見たこと、自分の手で触ったもの、自分の鼻で嗅いだもの、しか信用しない職人だということがわかる。まさにその1点において、お菓子には凛とした緊張感が漂うのだ。そして、無駄を一切省いた味と形。初めて食べた人はインパクト不足に感じるかもしれないが、不思議なことに、何日かたつと、また無性に食べたくなる。彼のお菓子は人の心に真っ直ぐ届く、独特の力強さと魅力をたたえている。 |
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