住宅街で長年愛されているフランス料理店のパティスリー。良質な味と値段で地元でも評判の一軒だったが、2000年に和泉さんがシェフ・パティシエに就任し、1年が過ぎた頃、「あ、変わったな」と思うようになった。それまでの洋菓子らしい親しみやすさから、シャープで巧緻なフランス菓子としての印象が濃くなっていた。その後メキメキと力をつけ、今では新進の若手として国内外で注目される存在に成長した。
和泉シェフをひと言でいうと「研究肌の人」。おそらくそれは、彼が海外での修業経験がないことにも起因している。伝統を単に踏襲するのでなく菓子を理論的にとらえ、ひとつの素材やテクニックに対して徹底して試行と分析を繰り返してきた。それが結果、フランス菓子らしい精巧さにつながっているし、一方でフランスにとらわれていない分、伸びやかで自由な個性の表現がある。まるで子供が無心で作ったような自然さと大らかさに満ちている。
「流行ではなく、本質を大事にしたいんです。素材のおいしさがくっきりと際立つような味や形。テクニックはそのためにあるもの」。最近はクラシック菓子の素晴らしさを改めて実感したといい、ブリオッシュ生地を用いたサヴァランをはじめ、ネオ・クラシックな菓子も次々に挑戦。そのひとつひとつに、和泉シェフならではの技術とセンスが加味されていて興味深い。
ここ数年はコンクールでの活躍もめざましい。2005年はフランスで開催されるチョコレート・マスターズの日本代表、2006年はワールド・ペストリー・チーム・チャンピオンシップの日本代表も務めるミッションが待っている。今後、日本のパティスリー界を担うひとりであることは間違いない。 |
|