スパイスで異国の香りを食卓に

 ふつう、スパイスと呼ばれているのは、植物の芳香のある根や幹、つぼみ、種子、果実などを乾燥させたものです。スパイスとはラテン語で「特別の種類」という意味のspeciesから来ています。はるか昔、スパイスは西洋人たちにとって、まさに特別のものであったことが想像されますね。

 シナモンやペパー、ジンジャー、クローブ、ナツメグなどスパイスの多くは熱帯アジアの原産ですが、西インド諸島と中央アメリカではオールスパイス、バニラ、チリなど、地中海沿岸地方ではコリアンダー、フェンネル、マスタードなど芳香性シード類が多く生産されています。比較的寒い地方では、ジュニパー、キャラウェイなどが栽培されるなど、いまや消費も生産も、多くの国で行われています。

 スパイスの独特の香りは、植物に含まれる揮発性の芳香成分によるものです。ペパーやチリ、ジンジャーなどは口に入れるとひりひりした辛味がありますが、どれも少しずつ違います。辛さや甘さ、すっぱさ、塩辛さ、苦さなどの味覚はまず舌で感じますが、そのほかの複雑で微妙な味は、香りで味わっている場合も多いのです。風邪で鼻がつまっていると食事が味気ないのと同じです。

 かつてスパイスは大変高価なものだったので、ひきだしや特製のスパイスラック、小さく仕切った箱などに鍵をかけてしまわれていることもありました。古代から薬や防腐剤、香料としても珍重されてきたのです。紀元1世紀、ギリシャの軍医で植物学者でもあったディオスコリデスは薬学の本を残していますが、これが西洋で初めてスパイスやハーブを使った治療法を紹介した本なのです。
 ヨーロッパでスパイスが料理に広く使われるようになったのは、中世後半になってからのことでした。14世紀末のパリではすでに、ふつうの主婦がスパイスを買っていいます。17世紀にはいると、スパイスの価格も下がり、さまざまな料理に使われるようになりました。とくにオーブンを使った料理やお菓子などで重宝されました。

 今日、私たちの食生活にスパイスは欠かせないものとなり、手に入る種類も多くなっています。まだ手にしたことのないスパイスを使って、いろいろな料理にチャレンジしてみては?

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