人類最古の食べ物はパンだった

 最近は、朝食にご飯とみそ汁、という「和食派」が減り、パンとコーヒーという人が多くなっているようですね。あなたは今朝、パンを食べましたか。

 パンの歴史は古く、その発祥は紀元前4000年とも、5000年ともいわれています。一説には、メソポタミア文明の遺跡からパン窯のようなものが出土したことから、彼らが平焼きパンを焼いていたのではないかと言われています。古代エジプトのラムセス3世(在位紀元前1198〜1166年)は、神殿に600万個のパンを捧げたといわれ、墳墓にはパン職人たちが働く様子が描かれています。

 
最初のパンは、穀粉を水で練った、団子の様なものだったと想像されており、今のようにふっくらとしたパンになったのは、偶然の産物だったようです。穀粉と水を混ぜ合わせたものを、気温の高いときに何日か置いておくと、自然に発酵しはじめるのです。
 古代エジプトでは、すでに発酵パンが焼かれていたようです。発酵の原因は、大気や穀粉の中に存在する「酵母」と呼ばれる細菌(単細胞の植物)の働きです。当時の人々はこの酵母の働きに気がつき、自然の中に酵母を探し始めました。穀類などをえさ(培養基)として天然の酵母を集めて培養したのです。
 エジプトで生まれ育った酵母パンは永い年月をかけて世界各地へ広がり、それぞれの嗜好や風土、材料に合った酵母で独自のパンが作られました。例えば、北欧のじゃがいもとビール酵母を使ったホップ種、フランス古流の果実種、ソ連の酸味パン(黒パン)用の赤松の葉からとったドロシー種、中国の小麦粉に水を加えて作った饅頭種、日本の炊飯と米麺を混ぜて作った酒種。これらは、今はもう古流となった世界の代表的な天然酵母のパン種です。

 
これらのパンづくりも、やがて世界の工業化とともに大きな変化を迎えることになります。
第一次世界大戦の末期、ドイツで画期的な酵母の発明がありました。戦後の食糧難で、ドイツは不足する砂糖のかわりに「樫の木」の代用糖を使っていました。その廃液と化学物質を培養基として酵母が作れることを発見したのです。この酵母は、パン生地の発酵力が強く、機械で大量につくるのに最適でした。イーストと呼ばれたこの人工酵母は、またたく間に世界中に広まっていき、現在、大きなメーカーがつくるパンのほとんどはこれを使ったものになっています。

 日本のパンの歴史は、16世紀後半にポルトガル人のキリスト伝道と共に広めたれたという説もありますが、実際にはもっと古く、その歴史は2000年以上にも及びます。弥生遺跡や古墳時代 の遺跡からも、 小麦粉が出土しているのです。つまり、ポルトガル人によって、小麦のタネがもたらされたのではなく、大陸から移り住んだ人が小麦を携行してこれを栽培し、大陸式の調理法で食べていたと考えられるのです。

 いまの日本では、自然酵母のパンから、中国、ポルトガル、イスパニア、オランダ、 フランス、イギリス、ドイツ、ロシア、アメリカ、インド、アラブなど、あらゆるパンが手に入ります。お米が主食の国とは思えないほどです。せっかくの「パン天国」の日本、いろいろなパンを試してみませんか。

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