まつたけがあんなに高いわけ

 「食欲の秋」とは、よく言ったもので、秋になるとおいしいものがたくさん 出てきますね。その中でもやはり別格なのが、まつたけではないでしょうか。
 
日本はキノコ王国と言われ、その種類は180種類以上にものぼります。実際に食卓に上るのはそのうち20種ほどですが、まつたけはその特有の香りの高さでキノコ類の王様といっていいでしょう。

 まつたけは古来よりその気品ある香りで人を惹きつけてきました。 そして千余年を経た現代に至ってなお、「風味」と「価格」で、陸の食材の 王者として君臨を続けています。
 
バイオ技術の進歩により、人間にとって有用なほとんどの植物の栽培が可能に なりました。それらは量産され、比較的安価な値段で年間を通して市場に出回 ります。それに対し、まつたけは未だ人類が完全栽培化に至っていない植物のひとつで、自然発生したものを採取し出荷しているものが大半です。絶対的な 総量の少なさが、高価格につながっているのです。そして、国内での発生時期 は秋の約1ヶ月間と限られ、店頭に姿を現すことで旬を知らしめる圧倒的な存在となっています。

 まつたけが誕生するには、いくつかの自然条件が奇跡のように出合うことが必要です。アカマツの林齢、斜面や尾根の向き、日当たり、土壌微生物の量、 立木密度、腐植層の量、アカマツの細根の密度、母岩の種類などに加え、 雨量、気温、湿度など、それぞれが同時に一定の条件を満たした場合にのみ、 まつたけが地表に姿を現すのです。
 近年は、山の下草刈りや落ち葉かきも行われないので、アカマツ林に落ち葉が厚くつもり、山の土が肥え、ほかのきの こやカビの方が育ってしまい、なかなかまつたけが生育しないそう。

 現在、市場に輸入まつたけを多く見かけます。全国のまつたけ消費量に占める 国産まつたけの割合は僅かに約5%。かつては日本でもたくさん採れたまつた けですが、代わって中国をはじめ、韓国、カナダ、トルコ、モロッコ、メキシコなど、世界各国産のまつたけが日本市場目指して集まるようになりました。中国料理でも高級きのことして使われますが、日本ほど需要はないそうです。
 まつたけは香りが最も珍重されますが、市場に出回る段階で一定水準を満たす輸入物はほとんどありません。品質にこだわるならばやはり国内で採れたまつたけと いうことになるでしょう。
「ぜったいに本物のまつたけが食べたい!」という方は、傘の開いていない、軸が太くて短く弾力のあるものを選んでください。傘が開ききると香りが落ちてしまいます。
 まつたけの香りの正体は、桂皮酸メチルエステルとマツタケオール、イソマツタ ケオールという成分です。まつたけそのものの人工栽培は、まだ完成されていませんが、この香り成分はすでに開発されており、人工的にまつたけの香りをつ けた商品も出回っています。

 まつたけは香りと歯触りが命。いちばんおいしいのは、焼きまつたけでしょう。そのまま直火で焼き、熱いうちに裂き、しょうゆで食べる。これぞ、香りをいただくぜいたくな食べ方です。 ほかにもエビやハモ、三つ葉を入れた土瓶蒸しや、まつたけご飯、すまし汁など、和食がこれほどおいしく感じられる時はないかもしれませんね。


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