パンを見ればお国がわかる
 いま日本では、世界中のパンが食べられるといわれるほどに多くの種類のパンが作られています。世界のパンは、それぞれの国の気候風土に根ざし、長い歴史と伝統によって培われてきたナショナル・ブレッド(その国独特のパン)といわれるもので、国や民族の食文化の象徴ともいうことができます。

 たとえば、フランスでは、料理の味とのバランスをとるため、かすかな塩味のリーンなパン(砂糖やバターなどを加えていないシンプルなパンのこと)が代表格。一般にフランスパンと呼ばれているものですね。また、焼き立ての風味にこだわるのがフランス人。そのため住宅地にも必ずパン屋さんが何軒かづつあって、早朝から焼き立てのパンが手に入るようになっています。
 フランスはヨーロッパ有数の農業国であり、昔から直焼きパンに最適な小麦が収穫される国でした。ですから、フランスのパンは「小麦粉の味を味わうもの」とされ、何世紀にも渡って伝統的な製法が頑固ともいえるほどに正しく受け継がれています。

 ドイツは日本以上にパンの種類の多い国として有名です。500g以上の大型パンが250種類以上、250g以下の小型パンは数百種類もあるとか。おまけにクッキーなどの焼き菓子も含めると、パン屋さんで扱う商品はなんと1,200種類ほどにもなるといわれています。
 ドイツのパンは、ライ麦粉を使ったロッゲン(ライ麦)ブロートと、小麦粉で作られるヴァイツェン(小麦)ブロートの二つに分けられます。 この他にもライ麦粉と小麦粉を混ぜ合わせたミッシュ(混ぜる)ブロートがあります。更に、2種類の粉の割合によっても、ライ麦粉の多いものをロッゲンミッシュブロート、小麦粉の多いものはヴァイツェンミッシュブロートと呼び分けています。ですから、パンの名前を聞けば配合が分かるくらいで、そこはいかにもドイツらしい特徴といえるでしょう。

 ヨーロッパの国々では、パンは中世から近代、そして現代にいたるまで、宗教と深く関わってきましたが、新大陸・アメリカでのパンは、すべての伝統から脱却して、ひたすら合理化されることになります。それにともなって製パン技術にはさまざまな工夫がなされ、発展していきました。 アメリカのパンの多くは小麦粉にバター、ミルク、鶏卵などを加えたリッチなものが主流です。そして、生産性を高めるために連続製パン法、冷凍技術などを開発することで国民の食生活の向上を図りました。

 では、日本のパンは?
 有史以来のパン文化の歴史を持つ欧米諸国に比べると、いわば日本はパン文化の新興国。いま文明開化のようにさまざまな種類が作られている中から、日本のパン文化が始まるのかもしれません。


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