料理とはすばらしきアート

 シェフの料理をみていると「料理はアート」という言葉が自然に思い浮かびます。よく知っている素材から魔法のような1品を作り上げたり思いもかけない組み合わせの妙から絶品を作り出したり……。
 映画と料理も切っても切れない関係があります。料理を題材にした作品も多いですし、また、料理とは関係のない映画でも、かならず料理シーンや食事のシーンは入っています。そんなときに、「どんな料理を食べているんだろう?」 「どんなふうに盛りつけているんだろう?」と見入ってしまうのは、私だけではないはずです。

 料理を主題にした映画というと、みなさんは何を思い浮かべますか。私はちょっと前の映画になりますが、『バベットの晩餐会』でしょうか。老いた牧師の姉妹のところへパリから逃亡してきたバベットという女性がやってきます。やがて教会を支えるようになった彼女は、宝クジで当った賞金をつぎこんで、たった一度の豪華な晩餐会を催します。かなわなかった若き日の願いや、心に秘めていた想いが、この晩餐会であふれ出すのです。アカデミー賞に輝いた美しくて、心なごませる名作だと思います。

 「料理はアート」という言葉に対応するのは、「料理は愛情」という言葉でしょうか。「母親の愛情あふれる料理」などというフレーズを聞くと、私は我が身を振り返ってぞっとしてしまいます。なぜなら、私がこのフレーズを聞くのは、なにか失敗してしまったときだから。そして愛情さえあえれば料理はおいしいか、というとそんなことはないのです。テクニックさえ積めば、料理はそこそこおいしくできる。そこそこ上手くなるのに愛情はいりません。
 
では、シェフに愛情がないか、というとそうではありません。そこには確かに愛情がある。でもそれは、具体的な食べ物への愛というよりはもっと抽象的な愛。つまり、相手を満足させるよりも自分を満足させ続けていく営みではないかと思います。

 シェフの料理をみていると、やはり料理はアートであると思います。いい材料にいい器。火加減、微妙な味付け、美しい盛りつけ。これらによって完成されるアート。一皿のご馳走には美味が凝縮されていて、そこには作る料理人の心が現れているような気がします。中華、フレンチ、イタリアン、和食と、素材や作り方が違っても、どうすればおいしく作れるか、それぞれにちゃんとセオリーがあります。音楽を演奏するときや絵を描くときと同じように、料理をする約束があるのです。

 最後にとっておきの映画をご紹介しましょう。
『宮廷料理人ヴァテール』
 これは、ルイ14世の治世下にある1671年のフランスの話。国王と500人以上の廷臣を、3日間の饗宴でもてなすことにした大公は、この大饗宴の運命をフランスきっての名料理人・ヴァテールの手に委ねます。 フランス映画史上空前の40億円を投じ、3日間の宴の中で起きる愛や陰謀を描いた作品で、2001年セザール賞最優秀美術賞を受賞した絢爛豪華な宮廷も見どころです。


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