チーズは最も古い食べ物のひとつ
 チーズは「砂漠に生まれ、牧場に育った」とも言われ、文明史上、最も古い食べ物のひとつに数えられます。チーズとパンとワイン。これらはいずれも優れた発酵食品であり、伝説や聖書などにも登場し、人々の大切な生命の糧であり続けてきました。

 西アジアに発祥したチーズがトルコ、ギリシャを経てイタリアに伝わったのは、紀元前1世紀ごろのこと。チーズはこの国でめざましい進歩を遂げます。それを支えたのは、美食への限りない執念を持ったローマ人だったのです。
 イタリアでチーズ作りが始まったのは、中部イタリアの先住民族のエトルリア人によると言われています。ローマ時代には、すでに10種を数える原産地の確かな銘柄チーズが、美食家たちの間で評判になったと伝えられています。

 たとえば、ローマ周辺部では、すでに、羊の乳から作られるペコリーノ・ロマーノがあったといいますし、北イタリアのロンバルティア平原を貫流するポー河流域から北方のアルプス高地へ向かう地方でも、チーズ作りが行われていたようです。このあたりは今も、チーズ料理の故郷として知られるところです。

 現在、イタリアのチーズとして最も有名なパルミジァーノの生まれ故郷も、この北イタリアです。パルマとレッジョ・エミリア周辺で作られることから、“パルミジァーノ・レッジァーノ”と呼ばれるこのチーズ、イタリアでも非常に価値あるチーズとして有名です。お金と同じように大切に扱われていて、投機の対象にもなるほど。このチーズの熟成庫は銀行が管理しています。

 水牛の乳で作られていたモッツァレッラは、古い時代のプロヴォラチーズに類するもので、その名は4世紀のモッツァ条約に起因します。それによれば、餌になる牧草やハーブの種類が定められ、生産されたチーズの色や香りにその特徴が反映されていなければ、品質、名称ともに認められないという厳格なものでした。

 青カビのゴルゴンゾーラは、数あるイタリア産の古典的なチーズの中では特異な存在です。「高貴なカビ」と呼ばれるように、9世紀に、ロンバルディア地方の岩穴の中で偶然に製法が発見されたもので、今も数世紀前と変わらぬ方法で作られています。

 イタリア料理は、チーズに始まり、チーズで終わるといっても過言ではありません。イタリア料理の習慣は、その美食の伝統を築いた古代ローマ人の食生活に由来するものですが、そこから現代に至るまで、常に味覚の上で大切な役割を担ってきたのがチーズというわけです。オリーブの実とチーズとハーブ風味のパン、それにハチミツ入りの口当りの良い白ワインは、前菜として当時の人々の食欲と好奇心を大いに誘い、またデザートには、季節のフルーツとともに種類も豊富な特産銘柄チーズが揃ってこそ、完璧な食事になると考えられてきました。そして風味のよいチーズは、メイン素材を引き立てる大切な調味料としても利用されたのです。

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